SHEP(市場志向型農業)アプローチの効果を高める、 農業普及員及び農家によるマーケティングを支援するイノベーション
(想定するソリューション例)
農業普及員や農家グループが保有するタブレットや携帯電話等の端末を用いて市場情報等を取得・蓄積し、その情報を必要とする農家と共有するソリューション
農業普及員や農家グループがマーケティングに活用できるMAツール、CRMツール
現在、農家グループが紙に記入している市場情報をデータ化するソリューション
BACKGROUND
タンザニアでは、JICAプロジェクト「SHEPアプローチを活用した県農業開発計画実施能力強化プロジェクト(TANSHEP)」が実施されています。Smallholder Horticulture Empowerment & Promotion(SHEP:市場志向型農業振興)アプローチとは、2006年から始まったケニア農業省とJICAの技術協力プロジェクトにおいて開発された小規模園芸農家支援のアプローチであり、野菜や果物を生産する農家に対し、「作って売る」から「売るために作る」への意識変革を起こし、営農スキルや栽培スキル向上によって農家の園芸所得向上を目指すものです(SHEPアプローチの概要は次項をご参照ください)。SHEPアプローチでは、農家の気づきの機会創出のため、農家が直接市場を訪れて市場調査を行います。価格だけではなく、求められる品質や量、価格の変動や売れ筋の品目についての情報収集を行い、市場調査の結果を基に、農家グループのメンバーが栽培する作物を選びます。
SHEPアプローチは、農家が能動的・積極的に情報の非対称性を緩和し、農家の自立的な動機付けを促すために有効な手法であることが確認されています。一方、多くの農家は市場調査を実施した経験がなく、それを始めるにあたっても、どの市場を訪問すべきか、市場選びに戸惑い、また実際に調査を実施してもバイヤーが提供する情報を、詳細に確認したり、真偽判断することなく鵜呑みする傾向にあります。今後、 農家グループ内や近隣地域の農家グループとの間で、市場調査や実際の販売結果などの情報共有を行うことができれば、近隣地域での市場機会を適切に把握することができ、市場調査を現実的かつ具体的に計画・実施することができるようになります。また、自身の調査結果を保存し、最新の情報を入手し更新、他の仲間に共有することができれば、販売先を比較検討できたり、グループ販売を行うことができたりするメリットが生まれると考えられます。
本チャレンジでは、SHEPアプローチを習得した農家による市場調査結果等の情報を収集・蓄積し、農家グループ内や他地域の農家グループとの間で共有でき、SHEPアプローチの効果を拡大するソリューションを募集します。
「SHEP(市場志向型農業)アプローチ」とは?
Smallholder Horticulture Empowerment & Promotion(SHEP)アプローチとは、2006年から始まったケニア農業省とJICAの技術協力プロジェクトにおいて開発された小規模園芸農家支援のアプローチであり、野菜や果物を生産する農家に対し、「作って売る」から「売るために作る」への意識変革を起こし、営農スキルや栽培スキル向上によって農家の園芸所得向上を目指すものです。ケニアでは、このアプローチの実践により、わずか2年間(2007年6月〜2009年10月)で2,500もの小規模農家の収入を倍増させました。
JICAはこのアプローチを広めるべく、SHEPアプローチを取り入れた活動をアフリカ地域中心に世界各国で実践しています。
詳細URL:https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/approach/shep/index.html
Source:https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/approach/shep/index.html
WHY PARTICIPATE?
- JICAが実証機会を提供(主に実証の際のユーザーとなる農業普及員や農家グループを想定)
- JICAが実証支援予算を提供(300~500万円程度を限度に)
- 事前に設定するKPIが達成され、実証が成功した暁にはJICAプロジェクトにおける導入の可能性
- JICAによる政府機関や公的機関等のネットワークの提供
POINTS TO CONSIDER
- タンザニアには首都を中心に4Gがネットワークが利用可能ですが、通信環境が弱い地域も多く存在します。弱い通信環境でも適用可能なソリューションの提案を歓迎します。
- 市場情報サービス自体は民間企業のものも含めアフリカに複数あります。本チャレンジで求めるソリューションと、一般的な市場情報サービス、現行のSHEPアプローチの関係は下表の通りです。
手法 | 情報 | 収集方法 | 伝達方法 | 備考 |
---|---|---|---|---|
一般的な市場情報サービス | 市場ごとの市場価格、バイヤー情報等 | エージェントが市場に赴き情報収集するケースが多い | USSDやSMSを用いたメッセージ送受信 | - 携帯電話を持っていれば誰でも情報にアクセス可能(ただし、自分からアクセス必要) - 価格情報は大規模市場の卸売価格に限られる。 - エージェントが情報収集するため更新頻度が低い |
現行のSHEPアプローチ | - 市場調査:調査先相手(卸売業者、仲買人等)、連絡先、販売場所、市場価格等 - 実際の販売値 |
- 農家自身が市場調査を実施し、紙の市場調査票に記入 - 実際の販売値は、農業普及員が農家に聞き取り - 市場調査と販売結果はプロジェクトまたは県がExcelに入力・集計 |
- 農家グループの代表者が紙の市場調査票をもとに他メンバーに共有 - 必要に応じて、県がExcelに基づき農家にバイヤーを紹介(他農家グループと効率的に共有する手段がない) |
- 農家の自立的な動機付けを促すために有効な手法 - 一般的な情報サービスと異なり、小規模なローカル市場も対象。実際の販売価格(庭先価格含む)を収集している点も特徴。 - 一方で、情報共有の範囲が限られる(同じグループ内に限られる) - 情報入力や伝達も属人的 - 市場調査は継続的に実施することが求められる。 |
本チャレンジで求めるソリューション | 【現行のSHEPと同じ】 | ご提案願います (農家及び農業普及員の保有するデバイスについては次項「PoC」をご参照ください) |
ご提案願います (農家及び農業普及員の保有するデバイスについては次項「PoC」をご参照ください) |
本チャレンジでは、一般的な市場情報サービスと現行のSHEPアプローチの両方の強みを掛け合わせたソリューションを求めています |
- 農家や農業普及員が情報提供を行うインセンティブ
- バイヤーとのマッチングまたはバイヤーに関するレコメンデーション機能
- 多様な販売単位への対応
- バイヤー側による購入希望の作物、必要量、買取条件等の入力機能
- ITに知見がない人でも直感的に操作できるUI/UX
PoC
- 実証期間:2021年2月~6月のうち3ヶ月程度を予定しています。
- コロナの影響により現地渡航が難しい場合は、遠隔で実証することを想定しています。
- 実証現場は 「SHEPアプローチを活用した県農業開発計画実施能力強化プロジェクト」の対象地域であるアルーシャ州、キリマンジャロ州、タンガ州25県のうち重点支援12県の中から選定する想定です。
- 実証ユーザーは対象地域の農業普及員または農家を想定しています(実証人数は応相談)。
【農業普及員について】- 業務内容:直接生産者に対する営農・技術指導等を行っています。
- 使用デバイス:スマートフォンを保有している農業普及員もいますが、県レベルになるとその割合は低くなります。県レベルでのインターネット及びパソコン等の設備は最低限がありますが、旧式のデスクトップPCを使用している場合が多いです。上記プロジェクトでタブレット端末を購入が予定であり、県には5台(うち3台は普及員)に貸与されます(12県対象のため合計36人の普及員がタブレット端末を持つ)。OSはアンドロイドの予定で、SHEPアプローチのガイドラインを集約する(合計6GB)ことを想定していたためHDD容量(32GB)は少ないですが、タブレット端末を有効活用する提案は歓迎します。ただし、通信費は利用者負担になる予定のため、Wifi環境下のみで通信を行う等の工夫を検討いただけましたら幸いです。
- 上記プロジェクトでは1,080人程度の農家(30人/農家グループx 3グループx 重点支援12 県)を直接の対象としています。
- 先進的な農家はスマートフォンを保有していますが、フィーチャーフォン利用者が多いです。
- 現地とのコミュニケーションには基本的に英語が必要となります。
- ソリューションの操作言語についてはスワヒリ語・英語が望ましいです(特に普及員・農家をユーザーとして想定した場合、操作言語にスワヒリ語が必要) 。
「SHEPアプローチを活用した県農業開発計画実施能力強化プロジェクト」について
- 事業:技術協力
- 課題:農業開発/農村開発
- 期間:2019年1月〜2023年12月
- プロジェクト詳細URL:https://www.jica.go.jp/oda/project/1700376/index.html
- 概要:
タンザニアでは、約7割の人口が農業に従事し、GDPの約25パーセントを占める重要なセクターです。農村人口の約8割は農業に依存して生活していますが、生産性・収益性は低く、生活レベルの向上と都市部との格差解消のため、より高付加価値な農業への転換が必要です。園芸作物を栽培・販売している農家もありますが、必ずしも市場のニーズを意識したものではないため、十分な収益をあげているとは言い難い状況です。この協力では、同国政府の園芸優先地域において、タンザニアにおけるSHEPアプローチ(TANSHEP)の確立、重点対象地方行政区における県農業開発計画(DADP)の下でのTANSHEPの実践、中央政府による園芸優先地域へのDADP計画・実施支援を行うことにより、DADPが対象地域の園芸農家の農業所得向上に向けて機能するよう図り、TANSHEPを取り入れたDADPによる農業所得向上に寄与します。

農家グループによる 市場調査の計画づくり(モシ県)

農家・普及員に対するTANSHEP導入ワークショップの様子(メルー県)

卸売業者への聞き取り調査 (アルーシャ州の市場)

農家グループによる ベースライン調査の様子(カラツ県)
協力地域地図
出所:https://www.jica.go.jp/oda/project/1700376/index.html
SCHEDULE
2020年11月4日(水)~
12月7日(月)
エントリーフォームからご応募
2020年12月上旬~2021年1月下旬
1次審査結果通知は12月18日(金)を予定
JICAとの協議※1 :2021年1月中旬
最終審査※2:2021年1月下旬
2021年2月~6月
のうち約3ヶ月間程度
2021年6~7月(予定)
※1 ZOOM等によるオンラインMTG(1時間弱)をセットする予定です
※2 JICAとの協議を経て実証計画をブラッシュアップ頂き、企業概要、ソリューション詳細、実証計画などについてオンラインでプレゼンテーション頂く予定です
ENTRY
応募資格:本テーマについては英語でコミュニケーションが可能であれば海外企業の応募も可。ただし、その場合、応募書類は英語のみに限定します。
「応募する」よりエントリーフォームに進み、必要事項を入力してください
提案の評価基準は下記を予定しています。なお、評価結果は一切開示しませんので、ご了承ください。
- 課題の解決性
- 実現性
- 競合優位性
- 実証計画の妥当性
- 実績
CONTACT
お問い合わせは下記メールアドレス宛にお願いいたします。事務局より返信させていただきます。
Africa Open Innovation Challenge powered by JICA運営事務局
E-mail: jpopeninnovation-jica@tohmatsu.co.jp
契約の形態
本実証実験は業務委託契約に基づき実施頂き、提案者には業務委託契約の成果品として契約書に規定する報告書を提出して頂きます。
本実証実験の実施管理は、Africa Open Innovation Challenge powered by JICA 運営事務局が担っております(以下「事務局」といいます。)。事務局は、有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社による共同企業体が、JICAからの委託を受けて運営しております。このため、提案者は、実証実験実施に係る業務委託契約を対JICAではなく、対事務局(有限責任監査法人トーマツ)と締結することになります。
- 選考に係る評価内容及び結果は一切開示しませんので、ご了承ください。
- 本実証実験で提案者が調達する資機材の所有権はJICAに帰属するものとし、JICAは原則として実証実験終了後事業実施国政府関係機関等に資機材を譲与します。
- 提案者が製作するプロトタイプその他実証実験に関連する創作物の知的財産権は、本件業務委託契約終了後も提案者に帰属することとしますが、提案者はJICA又は事業実施国政府機関等に業務委託契約終了後も含む利用許諾を与えることを原則とします(別途提案者とJICAで書面により確認します。)。
- 業務委託契約の成果品である提案者が作成した報告書の知的財産権は、JICAに譲渡いただくものとします。
- JICAは提出された報告書を原則として外部公開します。報告書に提案者等の商業上の秘密に該当する内容が含まれる場合、内容の一部を非公開とします。その際、非公開とする内容と範囲については、提案者、JICA、事務局の3者が協議をした上で決定することとします。
- 本実証実験の概要は、JICAの広報活動の一環として、JICAにより公表されます。
- 現地情勢の変化やCOVID-19感染拡大の状況によってPoCが実施できなくなる可能性がありますことご了承ください。